もやいこ食堂は、2021年10月にスタートした地域の子ども食堂です。始めるきっかけは、ある子育て世代のお母さんでした。新型コロナによって地域のイベントが次々と中止される中でしたが、「子ども食堂をやってみたい」という想いを語ってくれたのです。その声を受け、西光寺を会場として開放し、「もやいこ食堂」が誕生しました。
「もやいこ」とは三河地方の方言で「分け合う」「共有する」という意味です。
子ども食堂といえば、子どもの貧困対策というイメージがあると思いますが、必ずしもそうではありません。現代は、経済的貧困に加えて、経験の貧困、関係性の貧困の三つの貧困があると言われています。これらの課題にアプローチする目的で取り組んでいます。
始まった当初は約30人でしたが、今では乳幼児から高齢者まで100世帯ほどが参加するあたたかな集まりへと育っています。遠くは刈谷や安城から参加する方もいます。毎回、子どもたちの笑顔と元気な声があふれ、地域の大人たちとの交流の輪も広がっています。
活動内容は、フードパントリー(食材配布)、遊び場、学習支援、食事提供(持ち帰り)です。時々お寺でランチをすることもあります。夏は流しそうめん、冬は餅つき大会などのイベントも行っています。また、そば打ちや工作を教えてあげると申し出てくれる人もいて、体験機会を提供することもできています。このように支援の輪も広がっています。
その根底に流れる「誰一人取り残さない社会」という理念は、「摂取不捨」と通ずるところがあると思います。
子ども食堂を始めたことで、これまでお寺にご縁がなかった若い世代に足を運んでもらえるようになり、子ども報恩講や夏休みの行事にも参加してくださるようになりました。参加者のあるおばあさんが、毎回始まる前にゆったりと仏さまの前に座って手を合わせていらっしゃいます。子どもたちにとってはそのような姿を自然に目にする機会でもあるようです。
もやいこ食堂は、ただ食事を提供するだけでなく、子どもも大人も「誰かとつながる」場所。「ひとりじゃない」と感じられる、そんな居場所づくりをこれからも大切に取り組んでいきたいと思います。