2500年前、お釈迦さまはインドのクシナガラにて入滅されました。その時の様子を『』を基に描いたものが「涅槃図」です。
「涅槃」あるいは「入滅(ニルヴァーナ)」は、すべての煩悩の火が吹き消された状態、覚りの境地を指しています。
入滅されたとされる3月15日(旧暦の2月15日)には、全国各地の寺院で涅槃図を荘厳し、「」が勤められます。
35歳で覚りを開かれブッダとなられたお釈迦さまは、以来45年間、インド中をされます。そして80歳の御年、クシナガラの地に至ります。
お釈迦さまは、の下で(頭を北、顔は西を向かれ、右脇を下にして)に臥されます。「私の亡きあとは、自分自身を、そして仏法を灯として歩みなさい。もろもろの存在は変わりゆく。怠らず精進しなさい。」と説法され、の上で静かに涅槃に入られます。
満月の下、神々や菩薩、ショックのあまり気絶するをはじめ、さめざめと泣き崩れるお弟子や動物たち、腰を抜かす仁王や竜王、に先導され、から不老不死の薬を携え雲に乗って駆けつける。お釈迦さまの労をねぎらい御足をさする120歳の老婆。あらゆる衆生が入滅を悼んでいます。
そして四方に描かれる8本の沙羅双樹は、お釈迦さまが入滅されたと同時に片側4本が枯れ、片側4本はますます青く茂ったといいます。これは「」といい、お釈迦さまの肉体は無くなろうとも、お説きになられた仏法は、苦悩する衆生がいる限り、どこまでも救い続けるという真理の永劫性を表しています。
人間釈迦からダルマブッダへのダイナミズムを一枚の絵の中に凝縮させたのです。
お釈迦さまのお姿は、仏教徒の理想の姿として描かれてきました。涅槃図もまた、理想の死の在り方が示されています。涅槃図を仰ぐということは、自分自身の死の在り方を考えることであり、仏法に出遇うことの大事をいただくことでもあります。